​『青の騎士ベルゼルガ物語』イラストレータ 幡池裕行氏 対談企画

『青の騎士ベルゼルガ物語』は、「装甲騎兵ボトムズ」のサイドストーリーとして、1982年にホビー雑誌「デュアルマガジン」(発行・タカラ、発売・丸善、編集・伸童舎)で誕生。その後、はままさのり氏が書き下ろした小説が、ソノラマ文庫で初版が1985年と、新装版が1997年に発売されました。

 

 そして今回、20年ぶりに『青の騎士ベルゼルガ物語』が復刊されたことを記念して、企画から『青の騎士ベルゼルガ物語』に関わり、小説版ではカバーイラストや挿画を描いた幡池裕行氏に、お話を伺うことができました。幡池氏のお話の相手は、新進気鋭の批評家・村上裕一氏。お二人には『青の騎士ベルゼルガ物語』の話題にとどまらず、ソーシャルゲームから、AI(人工知能)のことまで、縦横無尽に語っていただきました!まだまだ新しいことを貪欲に吸収し続ける幡池裕行氏と、それに鋭く突っ込む村上裕一氏の対談を、ぜひご覧ください!!

― 対談前から、『Fate/Grand Order』のお話で盛り上がっていましたね!

 

村上:最近知人と、『Fate/Grand Order』(以下、FGO)が日本を代表するゲームコンテンツになれたのはなぜなんだろう、という話題で話しました。というのは、原案に当たる『Fate/stay night』――たいへんな傑作ですが――が、さすがに日本を代表するほどのゲームというわけではなかったからです。他のソーシャルゲームと似ているのに、なぜFGOだけが特別な売れ方をしているのか。それは『Fate/stay night』がもともと持っていた魅力だけが要因じゃないかもしれない、と。

 

幡池:作品の『N次創作』というと、普通はファンが作っている部分じゃないですか。でもFGOは、プロが作った『N次創作』を吸収した世界観なので、いくらでも拡張できるような作りになっているから人気があると、ぼくは理解しました。常に最先端の世界構造を持っているので、FGO人気は当分続くのではと思っています。飽きそうになったら、また新しい世界観にシフトしてかまわないわけですし。最近も、『CCC』という外伝の世界観を持ってきて、それが非常にユーザーに受けていますね。

 

村上:ソーシャルゲームで、TRPGの巨大なキャンペーンをやっているような感じですから、先にやったもん勝ちとはいえ、ずるいですよね(笑)。この言い方には、単なる課金契機としてのゲーム内イベントよりも、より物語的コミットメントが強まるイベントになっているという意味があります。

 

 

幡池:おっしゃる通りですね。あと、MMORPGみたいなテンションもありますし。昨年末は、「みんなで敵の全魔神柱を総攻撃するぞ」というキャンペーンをやってたりしましたので。

 

村上:FGO以外の話になりますが、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』がメジャーなコンテンツでは人気で、知り合いのクリエーターがみんな僕に「いかにこの作品が好きか」という話をしてくるんですよ。どんだけ業界内人気があるんだと思わされました。詳しく聞いてみると、オープンワールドが好きだというんですよね。そのことと、FGOの拡張性の高さは似ている気がします。ただし、オープンワールドで世界観の継ぎ足しを可能にすることだけをしていればユーザーに受けるとかというと、そう簡単にはいかないはずです。だからこそ、FGOがなぜこれだけ受けているのが知りたいと思って……。

 

幡池:海外で受けている部分ですが、日本人はまず根っこに、精霊信仰、多神教があって、いくらでも後から神様を足していってもOK。海外はそれがなくて主神がひとつですが、天使の数を増やしたりはできる。だから、多神教を受け入れられないわけではないんですよね。

 

村上:(海外では)ゲームをクッションにすることによって日本的な文化を受容し、それをある種の口実にして消費を拡大できている感じなんでしょうかね。

 

幡池:そういう気がしますね。あと、海外のほうが日本よりもダイバーシティな社会になってきているから、ミックスして変化していく。「男であって、女でもある」とか、複雑な性を受け入れるような土壌が海外ではできている。それって、『Fate』の世界じゃないですか。アーサー王が女性ですよ!

 

村上:まあ人は見かけによりませんからね……(笑)。それはそうと、ソーシャルゲームはすでにいっぱいあるわけですよね。拡張性を持っているはずのゲームも、八百万の神をテーマにするだの、ものを擬人化してテーマにするゲームも、いくつもある。それとFGOの違いは何だろうと考えると、ひとつにはストーリーの長さを挙げることができますね。

 

幡池:あーー。自分は今、FGO的世界構造を越えられるように『ゼーガペイン』の次の世界を作っているので、そのへんをここでしゃべってしまうと、内容がばれてしまうので……(笑)。

 

村上:幡池さんはいつもこうなんですよ! そこでしがらみがない僕が勝手に話しますとですね(笑)、ソーシャルゲームって、たとえば、敵とエンカウントしたらボタンを押して敵を倒して、スタミナが切れたら補充して、……という基本構造がある。古い言葉で言うと5押し(ガラケーの「5」のボタンがエンターキー的な役割を果たした)の文化だったわけです。この意味は何かというと、ポチポチとミッションを達成するお使いゲーム的な「作業」の楽しみと、自分が持っているカード資産の誇示ゲームとしての「俺TUEEE」です。後者を補足すると、ソシャゲでは資産が重要です。希少なレアカードを持っている方が人に自慢できる。ところが、それはそのゲームを知らない人には意味がないので自慢できない。そこで、そういうカードを持っていると実際にゲーム内でも無双できるということが別口で充足感を補給してくれるわけです。そのさらなるヴァリアントとして、自分の気に入ったキャラを保有したいというキャバクラ=グループアイドル的世界観で最近は動いているようですけどね。無双できるだけでなく、好きなキャラと冒険できればさらに楽しい、というかその経験は交換不可能になる、とこういった手合いです。というわけでソシャゲは、そしてFGOもまた、こういうプリミティブなインタラクションを色々と内蔵しているわけですが、そこに加えて重要なのは、FGOがノベルゲームっぽいということです。

 

幡池:そうですね。ストーリーが見たいから、課金していく。キャラクターが成長していくのを見たいから、課金していくという。達成感だけではないですよね。

 

村上:ソーシャルゲームの既存の文脈だと、10分も20分も文章を読まされたらたまらない、と思うんですよ。というのはむしろ僕が周囲のソシャゲユーザに聞いた話なのですが……。にもかかわらず、FGOはソーシャルゲームの文脈から外れているのにヒットした。結局、物語を読ませるというのは非常に重要なことなんだろうなと思うんです。

 

幡池:それは、FGOのメインユーザーの想定が、村上さんと同じノベルゲーム世代だから?

 

村上:いや、違うようですよ。もうちょっと若くて、『Fate/stay night』を知らないユーザーもたくさんいる。『TYPE-MOON』の歴史も知らないし、『Fate/stay night』というゲームも知らない。

 

幡池:なるほど。でも、作り手のライターさんにせよ、絵描きさんにせよ、ユーザーにせよ、全員で『N次創作』を楽しんでいるタイムラインになっていますよね。

 

村上:そうなんですよ。従来のソーシャルゲームだと"マイルドヤンキー"的な人が暇な時間にやっているイメージがあった。でも、僕の見解ではFGOは本当に声優さんやイラストレーターさんが(プロモーションではなく)やり込んでいる。そういう方々なので一般ユーザーよりも特に目立ちがちという可能性もありますが、それにしても他作品よりもはるかに多くやっている感じがします。

 

幡池:自分で(FGOのイラストを)描いている人たちまで「(ガチャでキャラクターが)出ない!出ない!」と言っていますね(笑)。

 

村上:確率ってそういうものですからねえ……。ところで、ノベルゲームではイラストレーターが一人なのは当然なのですが、ソーシャルゲームではたくさんいるのが普通です。代わりにデザインのトーンだけは監修されているわけですが、さてFGO。『Fate』の世界観を考える上では、まあ大変すぎますが、全て武内さんの絵であるべきなのではないかという議論をしたことがありました。が、最終的には、たくさんの絵描きが分担していることが良いことだという方向性が見えました。なぜなら、それこそが「パッチワーク性」の良さの最たるもので、どんどん新しいものをつなぎ合わせることができるという構造の下地になっているからです。でも普通だったら成功しないビジネスモデルじゃないのかな、と思うんですよね。統一感がなくて、クオリティがばらばらになる可能性があるから。これがノベルゲーム系の作品で、ルートやヒロインごとにイラストレーター担当が違っていたら違和感がありますからね。もしかしたらイラストのタッチの違いで先入観的にえこひいきするかもしれない。ちなみにこれは仮定の話ではなくて、有史以来ギャルゲーにはそういう作品がいくつもあって、だいたいタッチは似せるんですけどどうしても個性が残ることは当然あり、しばしば落ち着かない気持ちでいましたね。

 

幡池:その中でぼくが見つけた記号としては『多属性』ですね。いくつも属性を持っていてもOKだということ。あとは『多軸』であるということ。軸がいくつも存在する。今までは軸がひとつで、クロニクル(年代記)的なものに設定を集約させていた。ぼくらの世代の作品が好きだった人たちは、みんなクロニクルが好きじゃないですか。年代記を1本のラインにして、それにそろえるような設定があればよかった。でも、今の人たちはそうじゃないですよね。SNS世代にとっては、どんなタイムラインがあっても構わない。そのタイムライン自体に、ある程度整合性があって面白ければ、サーフィンのように乗ってこれる。ぼくはそれを『多基軸』というコンセプトで考えていました。

 

村上:そもそもタイムラインという概念がかなり複数性を持っていますからね。Facebook的なタイムラインは、「人は色々な人生を送っているんだあ」ということを思わされますが、Twitter的なタイムラインは、同じ人間でも情報のスコープを変えるとこんなにも違った時間を生きることができるのかという感じです。特に後者は、SNSにおけるフレンドリストを動的に再現したもので、ユーザーの(可視化されていない)自己を見えるようにしてくれています。それだけでなくて、いわばフォローする人を変えることによる加工まで可能にしている。私たちの身体は一個なわけですが、この方法によって、いわば変身をすることができるわけです。こういう身体性のことを幡池さんは『多基軸』とか『多属性』と表現していると思うのですが、これを考える上での逆説は、身体性が複数化するとこれが不可視になるということです。ということでこれらの概念をどう企画に織り込むかは難しい問題、というか関係者が理解するのが難しそうな概念に見えますね。

 

幡池:(『多基軸』『多属性』を使って)視点を変えていくと、今までと同じような様式に見えて、まったく違う結論にたどりつけるような作品も作れるんじゃないかな。今進んでいる『聖刻(ワース)』のリブートプロジェクトでは、まったく違う方向にも行ける。でも『青の騎士ベルゼルガ物語』は『装甲騎兵ボトムズ』がベースにあるから、どうやってサンライズさんと一緒に権利問題をクリアして、良輔さん(高橋良輔監督)にもニコニコしてもらえるように新しく作ることができるのか、というのは心の底では気になっています。(1985年刊の)『青の騎士ベルゼルガ物語1、2』は、はまさん(『青の騎士ベルゼルガ物語』著者の、はままさのりさん)が自分のやりたい方向にどんどん引っ張っていったので、結構危険だなと思って、当時は、はまさんとぶつかったんですよ。「俺のボトムズじゃない!」って言って(笑)。だって、『青の騎士ベルゼルガ物語』はアストラギウス銀河が大崩壊しちゃうようなお話ですからね。この後に良輔さんが同じ年代の(ボトムズ)作品を作る時に、どうするんだ!って。でも今だったら、「これは違う世界線ですよ」と言ってしまえば済む。つまり『N次創作』ですよね。

― 確かに『青の騎士ベルゼルガ物語』は、『装甲騎兵ボトムズ』の『外伝』というよりも、『N次創作』と言った方が、しっくりくるかもしれないですね。

幡池:それと、ぼくが最近考えているのは、知能問題として「群知能」がどう動くか。生物の脳は、群れの中に入ったときに、自分の独立した行動を押さえて、群れに合わせた機能を働かせる。例えばFGOという集団の中で「自分はこう動こう」と考えていたり。ネットワークを通じた集団行動ですよね。そういうところからAIの新しい問題を掘り下げているので、これまでにない方向からも新しい作品を作れるのかな、と思っていますね。

 

村上:その話を聞くとメールゲームを思い出しますね。メールゲームやMMORPGでは、自分は絶対に主役になれないけど、歴史に参加することができるという点では、普通のフィクションとは違った経験を与えてくれる。そういう経験を、現代のテクノロジーや、現代人の認識の中においてどう再生成するかは、コンテンツを考える上では重要になりそうですね。

 

幡池:素晴らしい。今ひらめきました。古いものを掘り起こした時に、評論に近いようなSNS的な部分も同時に掘り起こして、過去の資産をどういう風に今のぼくらは楽しんでいるのか、論陣のようなタイムラインをたくさん作れるような遊び方をすると、昔のものを変えずに現代のコンテンツと結びつけられるのではないかと。

 

村上:それは、今ちょうどいいかもしれないですね。ちょっと前に勃興した『マストドン』みたいなサービスを使うと、それがかなり簡単に実現できる可能性がある。「ベルゼルガストドン」みたいな(笑)。『マストドン』は、幡池先生が発想しているネットワークの仕組みに近いんじゃないですか?

 

幡池:そこは考えたことがないですが、『多基軸』というキーワードに、『マストドン』は近いものを持っているな、とは確かに思いました。

 

村上:『マストドン』は『ゼーガペイン』にも近いかなと思いました。サーバーがあって、コピーサーバーもあって、その2つは相互に認識していないけれど、お互いに進んでいって……。

 

幡池:ありがとうございます。でも『ゼーガペイン』は、SF的な知識と、ノベルゲームが大好きだったから「こういうゲーム的構造が面白いよね」という理解で作っただけなので。(マストドンが)『ゼーガペイン』だな、って言っていただけるのはありがたいですけど。

 

村上:もちろんマストドンの構造を作品に落とし込むのは難しいことですが、『ゼーガペイン』だけではなくて、せっかく『青の騎士ベルゼルガ物語』もリブートするということでしたら、拡張性があって面白いものにしたらいいんじゃないのかなとは思いますね。

 

幡池:ベルゼルガと向きあうのは危険だと思ってきたんですけど(笑)、今しゃべっていてガスが抜けてきました。今、村上さんがガスを抜いてくれたので、あらためて向きあおうかなー。

村上:そう言っていただくと、僕も歴史的使命を果たせたかな(笑)。もう少し真剣に考えてみます。ベルゼルガを話題にするマストドンを作った。そこにユーザーがやってくる。どんなユーザーがやってくるのか? 昔のファンが来るのかもしれない。でも、他にも誰かに来てほしい。何を期待して来て、どうやって来て、来たあと何をするんだろうか? 来たあとにツイッターのまねごとをするだけではしょうがない。運営のアカウントがキャラクターのなりきりをしながら、書き込みをするのか。でも、それも過去にあった。最大500文字まで投稿できるから、そこにストーリーなどを書いていくか? ストーリーを書いていくだけなら、オフィシャルサイトと変わらない。じゃあ、そこにユーザーと運営とが新しい関係性を構築するには、どうしたらいいんだろうか? 読者を、単なる読者として扱わない、何らかの手法があるといいですよね。などなど……。

 

幡池:話はそれるかもしれないんですが、『LINEスタンプ』って難しいですかね?あれだけスタンプショップが流行っていて、でも、まだまだメジャーコンテンツが少ないですし。

 

村上:いま、いいアイディアが浮かびましたよ(笑)。LINEスタンプで『ビックリマン』ですよ! LINEスタンプでコンテンツを展開すればいいんじゃないですか? LINEスタンプの中に文脈を入れ込んで。そこに、思わせぶりな情報とかを入れていって……。

 

幡池:キャラクターを集めようとしていたら、そこに複雑なストーリーが存在していて……。

 

村上:そうですそうです。『ビックリマン』の凄いところは、提示されたものよりも、ユーザーが想像したもののほうが面白かったこと。つまり、ゲームの中心部以外、LINEスタンプに全力を投じればいいわけですよ。人々が使っているLINEスタンプを使って、強制的にストーリーを流通させるって、メジャーなコンテンツ流通経路に対するハッキング感がないですか? ストーリーはLINEスタンプで展開して、その情報の集約としてマストドンを使うとか。それに、ソーシャルゲームアプリのシステムを組んで、展開して、運営する……とまで言うとさすがに大変そうですね。でも、LINEスタンプだけなら、実現性が高い。実現性が高い分、すぐにしぼむ可能性もありますから、他のプロジェクトと同時にやるのがいいのかもしれないですね。LINEスタンプって、90日間とか期間限定のものもありますから、期間限定で思わせぶりな、いやいや、きちんと奥行きのあるストーリーのさわりのエピソードを展開して……。

 

幡池:今日は、いろいろ思いついてもらって、助かるなー(笑)。

― ここで、もう少し『青の騎士ベルゼルガ物語』にお話しを戻させてください(笑)。幡池さんは、今後『青の騎士ベルゼルガ物語』に関わられる予定はあるのでしょうか?

 

幡池:ぼくは「ベルゼルガ」に協力するというよりは、さっき言ったように、新しい概念を使いながら若い人たちが楽しめるようなものを、伸童舎にやってもらいたい。伸童舎でマネタイズして、若いデザイナーさんを取り込んだりして、成長していってもらえればいい。ただ、一番マズイのは、ぼくらの世代って「自分たち(の世代)だけ逃げきればいいや」って、みんな思い始めていること。自分たちが墓に入るくらいまで何とかなればいい、ぐらいに思っているところがありそうで。この前、知り合いが「もう新しいものがなくてもいいや」と言い出したので口論になったんです。でもそれは、心の中では嘘で、新しいものに対抗したい気持ちはあるんだけど、勉強を怠っているから、そう言わざるを得ない。でも、ぼくは若い人に「ごめんなさい、教えてください」と勉強会に通い続けていたらわかるようになってきた。老人になったから、頭が枯れるわけじゃない。70歳ぐらいのおじいちゃんで「攻殻機動隊はすごいよね」とか言いながら、量子コンピュータの研究をしている人もいますしね。そういう「凄い事」を、若い人たちに伝える。エンジニアと文系をつないでいくような仕事を、自分はやりたいなと思ってます。『スターウォーズ』のジョージ・ルーカスじゃないですけど、ぼくは今、人生2周目というか。いや、4周目か5周目の感じ(笑)。

 

村上:今回の『青の騎士ベルゼルガ物語』が売れたら、画期的ですね。温故知新じゃないですか。笠井潔さんの『ヴァンパイヤー戦争(ウォーズ)』が、『月姫』がリスペクトを受けた作品ということで再発見された。今度は『青の騎士ベルゼルガ物語』や『聖刻(ワース)』を読んだ人が、新しい『月姫』的なコンテンツを作ってくれたら、幡池先生のプロジェクトは完遂ですよね(笑)。

 

幡池:新世代に売れるように、睨みを利かせています(笑)。

 

村上:まあ古い発想を新しい革袋に入れたからと言って、必ずしも新しい発想になるわけじゃない。ただ、そもそも新しい発想が昔から残っていたのだとしたら、それにふさわしい時代が来た時に「新しい発想」として解放されるのかもしれないですね。

 

幡池:アカシックレコードに刻み込まれているコードがあって、ある時期が来ると、ある人たちがコードを読み取って、現在世界用にデコードしてくれるわけですね。別に、ぼくは神秘論者じゃないですけど(笑)。

 

村上:そうやって考えると、一定のボリュームをもって展開されていたコンテンツというのは、大体再利用というか、再起動の価値がある。というか、再起動を待っているのかもしれないですね。インターネット時代以前のコンテンツには、全部その可能性があるのかもしれない。インターネット時代は(コンテンツが)すごい勢いで消費されて、骨も残らないよう消えてしまいますから。

 

幡池:ボトムズの二次創作がベルゼルガなのに、そこからさらに新しいものになるのかなー。

 

村上:『二次創作』という言葉もいよいよ古くなっていますから、新しくしないと。

 

幡池:新しいキーワードが必要ですね。例えば「VR」(仮想現実)があって、次に「AR」(拡張現実)が出てきて新しいリアリティが発達してくると、今度は「MR」(複合現実)という言葉が重要になってくる。さらに、「MR」が複雑に入り組んでいる構造・多次元的状態を表す言葉というのも存在するはず。ぼくは、ポストリアリティの仮称として『多接続現実』と呼んでいて、勉強会で知り合った大学や企業の研究者さんたちにも関心もっていただいてます。

 

― 勉強会のお話が出ましたが、幡池さんは様々なAI(人工知能)勉強会にも参加されているそうですね。これからAIは、どのように活用されていくのでしょうか?

幡池:人間が物語を好むのは何千年も前からで、それは滅びない。だからこれからは、出版社が、物語をどうふうに新しい形態で発信していくかの時代になる。そうなってくると、次に出版社がやるべきは、物語作成AIを手に入れて、AIに何を書かせるかになるかもしれないですよね。すでに亡くなられた作家さんのお話を、その権利者のかたの了解を得て……。例えば、川端康成さんの文体で、AIで新作を作ることができますよ、こんなものが生まれましたよ、と出していく。

 

村上:おもしろいですね!

 

幡池:ただ、人の手を介さない二次創作に反発する人はいると思うんです。それは、人の心、気持ちですから。でも、そういう社会の中で楽しんでいる人たちだっている。群れの中で、個性が突出してみたり、逆に埋没してみたり。これからは、そういうことを凄く意識しながら生きていくのではないか、という気はしますね。

 

村上:AIに物語を作らせると反発が起きるかもしれない、というのは、AIが作ったからという反発だけではなく、作ったものに対する趣味判断のレベルでも反発が起きると思うんですよ。そんな中で、人間が作ったものか、AIが作ったものかわからない作品がたくさん出てきて、人気投票を繰り広げるバトルロイヤルが起きるんだったら、それは結構熱いかなあ。

 

幡池:ただ、AIが物語を作るコストがどんどん安くなると、今度は個別に作れるようになる。最低のコストで、瞬間的に作れるようになる。

 

村上:ボタンを押したら自動生成ですか。

 

幡池:そうそう。その人に一番快感をもたらすような感情の起伏を誘導するストーリーを、AIが作る……。

 

村上:オーダーメイド・ストーリーですね。

 

幡池:その通りです。それはすでに、勉強会のメンバーの一人でコンテンツプロデューサーの方が言われているんですが、アニメのコンテンツがAIに自動生成されることによって、ストーリーやオチが微妙に違う「個別のアニメ」というものを作ることが可能になるかもしれない。

 

村上:消費の構造がよくも悪くも劇的に変化する、ヤバい話ですね。

 

幡池:出版業界もいま陰りがみられる中で、「オンデマンドでいい」「作者から直接(買えれば)でいい」というお話がありました。でも、エディター(編集者)はどう考えても必要。エディターの能力を、全然見誤っているから、そういう話になるのだろうな、と。見えない個性が(作品に)反映されることによって、作品に厚みが増してくる。そういう風に、コンテンツはできているんだと思います。例えば、小説家と絵師がいて面白いというところはあるけれど、パッケージされるなかでデザイナーが関わっていたり、あおりの文章(を書いている編集者)があったり、なにが原因で面白い作品が生まれるかはわからない。見えないパラメーターが、非常に有効に働く場合もあると思うんです。それがいま、AIの時代になってさらに面白い方向に進んでいくと考えています。まさか、『青の騎士ベルゼルガ物語』というテーマの対談で、そんな新しい方向性の話ができるなんて、誰も思わなかったでしょ(笑)。

 

村上:まあ僕は幡池さんとよくお話させて頂いているので、むしろ、こういう話にならないわけがなかろうと思っていましたが……(笑)。

 

幡池:自分の「新しいものじゃないと嫌!」という性格がどうして生まれたかというと、ぼくの師匠が有名SFイラストレーターで、1年ほどのお付き合いしかなかったですけど、その時に非常に薫陶を受けたんですよ。その方に、「イラストレータの業界では、毎年数万人の志望者がいる中で、5年後に生き残っているのは何十人。5年生き残っていれば、一生やっていける」と言われてから30年たちますが、今ちょっと生き残っていくのがしんどくなってきたかなー(笑)。でも、ちゃんと新しい絵を描いたりもしてますから。今度、村上さんにもこっそり見せますよ!

 

村上:それは楽しみですねーー。ぜひお願いします!!

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